<月刊>アニメのツボvol.3、クリエイターズ・セレクションは大河内一楼氏、∀やキングゲイナーを語る
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クリエイターズ・セレクション
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ヒットメーカーが語るアニメの脚本術
脚本家:大河内 一楼 インタビュー
『∀ガンダム』で富野由悠季監督と組む
――その当時は雑誌のライターでしたが、物語を書くようになったきっかけは?
大河内 先の小黒さんの紹介で『少女革命ウテナ』(97)のノベライズを書いたことがきっかけで、色々と小説の仕事が増えたんです。その中に『(機動戦士ガンダム)第08MS小隊』(96)のノベライズがあって。そうしたら、そこで知り合ったサンライズの方(後にコードギアスのプロデューサーになる河口佳高さん)から、富野由悠季監督の『∀ガンダム』(99)で「脚本を書いてみない?」とお呼びがかかったんです。脚本なんて、書いたことなかったら、とても驚きました。
――初めて書かれた脚本は、どうだったでしょうか?
大河内 当り前のことですが、それまで書いたことがなかったのでメチャメチャ下手でした。富野さんがコンテで修正してくれたので、なんとか放映できたというレベルでした。当然、首だろうなと思っていたら、河口さんからもう一度脚本を発注されたんです。今度こそは、ちゃんとした脚本を書かねばならない! と思ったのですが、でも、どうしたらいいか分からない。そこで、手元にあった星山博之さんの『∀』の脚本を百回以上読み返したら、小説と脚本は別のリズムなんだって体感的に分かってきたんです。大雑把に言うと、小説って盛り上げるために助走距離が必要な感じなのですが、アニメはすぐ跳べるというか。文字情報だけじゃなく、声、音、絵、動きがあるので、一度に投入できる情報量が高いんだなって。それに気づいてからは、ようやく脚本っぽくなった気がします。
――あこがれの富野監督とのお仕事はどうでしたか?
大河内 僕にとっては「伝説の人」ですから、目の前にいるだけで嬉しくて嬉しくて(笑)。 怒られることすら幸せでした。とはいえ、脚本家を続けるつもりも、続けられるとも思っていなかったので、『∀ガンダム』のときは、いい想い出ができたなくらいの気分だったんです。でも、『オーバーマン キングゲイナー』(02)でシリーズ構成をすることになって、意識が変わりましたね。「僕がこの作品に貢献できることは何だろう?」と、ものすごく考えました。それでサンライズのスタッフに『機動戦士ガンダム』について聞いてみると、実はいろんな人が意見をぶつけあった結果、ああいう面白さに繋がってるという印象を受けたんです。
――富野監督も、脚本家とはそんな感じでやりあっていたと証言されていますね。
大河内 結果的に富野色に塗りつぶされるにせよ、他人のアイデアが下敷きにあった方が、富野さんのアニメは絶対に面白くなる。当時、そう思いました。それで『キングゲイナー』には、いわゆる富野メモが存在していたんですが、「シリーズ構成は僕につくり直させてほしい」と我ながら生意気な提案をしたんです。「オーバーマンの特殊能力」とかを相談もなしに書いていって。色々と怒られましたけど、でも、富野さんは「若いヤツを育てよう」というモードだったようで、受け入れてもらいましたね。ありがたい話です。
でも、あのとき全力で立ち向かったおかげで、技術的にも精神的にも手に入れられものは多かったです。たとえば情報を詰めこむにしても、「こことここだけ結べば成立する」とか「段取りを追わず、いきなり泣いているシーンから始まってもOK」など、いろんなノウハウを富野さんとの仕事で教わったと思います。
――スタジオでは富野さんの隣の机で脚本を書かれていたんですよね。
大河内 とても緊張しました。富野さんが脚本をめくるスピードが速いだけで「あっ、読み飛ばされた!」と怖かったし(笑)。アニメーターさんや演出家さんなどと色々と話せたのもいい経験でしたね。脚本家って、現場のスタッフからすると、ちょっと遠いところにいるんじゃないかってずっと思っていて、でも、目に見える位置で一緒に苦労して、夜中にアニメのバカ話なんかもできて、とても楽しかったです。
――『キングゲイナー』で思い出の回というと?
大河内 第17話「ウソのない世界」ですね。みんなに心の声が聞こえてしまう話で。富野さんが二稿でOKしてくれて、自らコンテをきってくれたのは嬉しかったなあ。富野さんがやる気になれる脚本を書けたのかもしれないって。自分は富野さんの『ガンダム』でアニメが好きになったので、その御本人とお仕事できただけでなく、未熟な自分を使い続けてくれて、たくさんの勉強をさせてもらったことは、本当に感謝しています。自分は本当に幸運で幸せだと思います。
機動戦士ガンダムで大きな影響を受けて、バイト先の先輩にザンボット3、ダイターンなどを勧められたという大河内氏。
ガンダム以外は、とんがり帽子のメモルの演出「佐藤順一」回で、そこからスタッフでアニメ見るようになったとのことです。
他には、谷口悟朗監督のプラネテス、コードキアスとヴァルヴレイヴの話です。
少しこちらの話とも似ていました。
富野由悠季らが語った「キングゲイナー祭 エクソダス、するかい?」レポート - GIGAZINE
・月刊ニュータイプ2013年12月号、新房昭之氏と大河内一楼氏の会話
まどかマギカの新房昭之監督「(イデオンは)毎週友だちに観せられました(笑)。とても好きな作品」
・大河内氏が参加しているヴァルヴレイヴと富野監督
ミスルトゥの中で 革命機ヴァルヴレイヴ監督松尾衡「富野監督の仕事に影響された」